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「辛味大根おろし(1200円)」@手打そば 天庵の写真鮮烈な暮坪かぶの辛味、旨みに悶絶した手打十割蕎麦の満足。これが趣味人の求める究極のこだわりか。

鎌ヶ谷大仏に来ています。関西うどんのお多福でこれ以上ない満足なうどんをいただいて、直後にここ天庵に周ってきました。車で3分くらいでしょうか。こんなに満足なのに、まだ行くの?行くんです。すぐ近くにずっと食べたかった蕎麦があるんですから。

この天庵で出す蕎麦に、暮坪(くれつぼ)蕪(かぶ)を使った冷たい蕎麦、辛味大根おろしがあります。お店が、最高級品と胸を張る暮坪かぶ。それって一体何物なんでしょう。

調べます。貴重なかぶの一種であることが分かりました。野菜のかぶです。日本で唯一、岩手県遠野市暮坪集落のみでしか栽培されていないかぶ。品種改良をしていない原種に近い品種で病害虫の抵抗力が弱く、大量には栽培できない、そうです。ネットで売られている暮坪かぶは1本2000円。かぶですが球形ではなく細長い形。食べると非常に辛味が強いながら独特の風味があり、蕎麦やさしみと食べることが多い。地元では漬物にして食べる・・・。

何というかぶが日本にはあるんでしょう。1本2000円って。それだけ市場には出回らず、地元の消費分を除いた少ない収穫量を高級割烹、蕎麦店、趣味人で取り合っているようです。それが、鎌ヶ谷で食べられる。お多福からたった3分行けば食べられる。行くしかないでしょね。行きました。

お店は木下街道を南に向い鎌倉大仏駅の踏み切りを渡ってすぐ右折し、住宅街に入ったところにありました。きちっとした駐車場があります。お店はりっぱな個人のお宅そのもので、玄関にのれんこそ出していますが、その家の作りとか植栽とかはプレハブ住宅ではない大工さんが建てた切妻造りのしっかりした家という印象です。これは恐らくはご主人の蕎麦打ちの趣味が昂じてお店まで始めちゃったお店ではないのかな、と期待が膨らみます。趣味から入った人はいい蕎麦を打つ、今までの経験からすべてそうでしたから。

入り口の戸に手をかけて、こんにちは。戸を開けて頭を入れます。奥様が迎えてくださいます。入り口、というか、玄関で靴を脱ぎスリッパに履き替えて家の中におじゃまします。玄関には趣味のいい骨董の和箪笥が置いておりますね。骨董ではなく、使ってこられたものなんでしょう。ふっと顔を上げると右側がお座敷になっていて、座テーブルが配置されています。お客さんが一人、庭に近い席に座ってますね。

左手が厨房になっていて、背筋がピンと伸びて快活そうなご主人から挨拶されます。厨房の前はカウンター席になっていて、そこでご主人の捌きをみたいなあ。どこでもいいですかとご主人に訊いてみると、どうぞどうぞということで、遠慮なくカウンター席の大釜の前に着席します。奥様から蕎麦茶をいただきました。メニュー立て、メニュー、薬味などがカウンター上に置かれてますが、その間隔は巻尺で計ったかのようにきっちりと、整然と等間隔で並べられています。平行、直角もすべて90度、180度。これは、几帳面なご夫妻に違いありません。気が合いそうです。

お品書きを手に取り、開きます。

辛味大根おろし(1200円)
当店の辛味大根おろしは、最高級の暮坪蕪を使用しております。

これですね。と思いつつも一応全部目を通します。実は、目の前に天ぷらを揚げる鍋が見えていて、ご主人はどんな天ぷらを揚げるのかなあ、なんてふと考えていたんです。それはないだろう。だよね。

すみません、辛味大根おろしで。

ああ良かった。直前のメニュー変更でかつてどれだけ泣いたことか。ご主人は大釜を点検したあと冷蔵庫から蕪を取り出し、目の前で懸命に擦り始めます。相当硬そうな感じで渾身の力で擦っているようです。気合が入った所作にますます期待が膨らんできます。擦り終えたおろしをやや大きめの蕎麦猪口の底に円錐の形で盛りました。つけ汁と一緒に目の前にセットされました。

そこまでしておいてから、朝打った蕎麦を取り出し、計量します。大釜の蓋を開け、大きな金属製の湯上げざるで釜の中をもう一度掬って点検し細心の注意を払いつつ蕎麦を投入。時間計測。これはすべて流れの中での作業ですが、確認を入れつつ絶対に間違いない最上の蕎麦を提供する気合が見え隠れしてます。茹で上がりを素早く掬いとり、冷水で洗いに入ります。そして最後は氷に入った水で〆なおし、十分な、慎重な水切りをして丸笊に盛り、行列の目の前に置かれました。

これですか、天庵の十割手打。端正に切り揃えられた蕎麦は、あたかも機械打ちのように太さの均一なのが目を引きます。切りむらは皆無。よく見ると蕎麦のつぶつぶが光を乱反射させて、どれだけ蕎麦が入っているのかが分かるくらい。やや太めに打たれた蕎麦を手繰り寄せていただきます。蕎麦の風味が静かに立ち上がり、蕎麦の甘みが出ていてとても強い蕎麦という感じがします。

蕎麦は腰がしっかりとして小気味いい食感がうれしいのと同時に、この滑らかな蕎麦を一気にすすりあげる触感がまたいい。あとでお訊きしたら、玄蕎麦は福井県の永平寺近くの山のほうで収穫されたそうです。最近福井県産の蕎麦によく当たります、と話したところ、同じ福井でも寒暖の差のある山で育った蕎麦はおいしいとのことでした。

実に上質な手打蕎麦を次に辛味だいこんなしで食べようとしましたが、蕎麦猪口がひとつなので、とっくりから辛味大根のはいった猪口につゆを注ぎぐるっと混ぜてから蕎麦を投入。大根を絡ませて、いただきます。

ここで、まあ、ショックを受けるくらいうまかったです。なんだあ、この蕪は。本当に辛い。辛いけど、辛味大根の辛さとは根本的に違います。尖っているけど丸く感じて、風味が実にいい。それが蕎麦と一体になると、俄然うまくなる不思議な蕪です。こんなうまい蕎麦があるんかいと思いました。後で調べると、おいしんぼにも登場している暮坪そば。いやあ、死ぬまでに食べれてよかった。あんまりうまいので、思わず声に出てしまい、目の前のご主人と目が合います。

いやあ、驚きました。こんなにうまいんですか。

そうでしょ。これを食べたら、辛味大根は食べられませんよ。まあ、値段も違いますが喜んでいただければ儲けなしでやらせてもらってます。実は蕪を入れる前のつゆも自慢なんですよ。

そうでしょ。実は蕪なしのつゆでお蕎麦をいただきたかったのですが。猪口がひとつだったので。

ああ、これは失礼しました。

蕎麦猪口を出してもらい、蕪なしでいただきます。やっぱりこれは相当材料を贅沢に使っていて丁寧に作ったつゆですね。濃い口で味が深い。甘みもやや感じるほどの出汁が利いていて、せいろ蕎麦もきっちりとうまい。さ、また暮坪蕎麦の続きをいただきます。うめえうめえ。蕎麦に転向してよかったと思える瞬間。単純に見えながらもこんなにも奥が深い日本蕎麦。

蕪でも食べたい、つゆのまま食べたい。この日は蕎麦が2倍ほしいところでした。蕎麦湯もきっちりと蕎麦粉を溶かした調整蕎麦湯。つゆの実力が如何なく発揮され、これで3回目のお楽しみでした。ふう。満足感に気持ちを委ねます。すごい蕎麦屋。すごい店主。食べている間に常連さんが入って来ましたが、可能なら毎週でも食べたくなる極上の蕎麦がここにあります。頃合を見計らって、

失礼ですけど、手打は趣味から入られたのですか?

そうなんです。

これだけ丁寧なお仕事をされている上に、材料へのこだわりがすごくて。趣味から入られた方は、少しでもおいしくなる手立てがあれば惜しみなく材料や手間を費やしますからね。

ただそれだけじゃあと思って、銀座のMで修行したんです。

むむ。このキッチリとした、きびきびした調理はちゃんと裏づけがあったのです。鎌ヶ谷にお住まいの方がうらやましいです。

実は、胡麻もおいしいですよ。

誘っていただきました。次回は、かけそば、と思っておりましたが、やはりかけは寒くなってからのほうが専門に出汁をとるのでということです。パラノア、お多福、天庵というこのゴールデントライアングル、いつの日か第二幕に進もうじゃないの。

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