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「金砂郷蕎麦(850円)」@手打そば 浅川の写真目の前に写真ではない、本物の手打そば浅川があります。お店の外壁には古木に筆で店名が書かれた大きい看板が嵌められています。ずっとあこがれていたお店の前に立つことができました。蕎麦のブログでお店のことを知ってから、随分時間も経っています。何回も繰り返してお店の空気を感じようとしてブログの写真を見ていましたから、この看板も知っています。お店の品のシンボルのように感じていました。

まだ開店時間まで30分あります。早朝に家を出て一般道で前橋に入りました。高速を乗り継いでくると高速料金は往復で6000円を超えますので、蕎麦代よりもずっと高くなってしまいます。記念レビューを上げる時期が分かっているのに、どうにも忙しくて時間が取れませんでした。家族の協力を得て、この日の夕方まで時間をもらい行きは早起きして一般道で、帰りは高速で帰れば貴重な時間を有効に使えると思い。

前橋に入ってきたのは午前10時。浅川の開店時間まで1時間15分あります。道が混雑する前にと思って来ましたので仕方ありません。浅川の前にもう1軒行けます。お店の場所を確認してからそちらに向かい、また戻ってきました。車から降りて店の入り口に行くと“準備中”の看板がありました。よかったあ。安堵の胸をなでおろします。時間が経てばお蕎麦をいただけます。30分経てばお店に入れます。


蕎麦の奥の深さには知るほどにただただ驚くばかりです。先般人間ドックの結果を知らされ、健康を害する寸前で蕎麦食を始めて、結果健康体を取り戻し蕎麦に助けられました。今回はその恩に報いるためにももっと多くの方に蕎麦に興味を持っていただき、そしておいしく蕎麦を食べていただこうとの思いもあって、日本蕎麦店を記念リストに据えることにしました。

経験したのは、どの蕎麦店に行っても大勢の若者が競って蕎麦を食べている姿を見たことがありません。蕎麦は消化がよく、しかも単位重量当たりの単価としてはラーメン、うどんなどに比べられないほど高いです。すぐに腹が減ってしかも高い、のではそっぽを向かれるのも当然でしょう。

その結果日本の蕎麦の作付面積は減少の一途を辿り、ますます原価アップをきたしてます。現在蕎麦の作付面積はおよそ4万5千ヘクタール。小麦に比べておよそ5分の1。主食の米と比べては分が悪いですが、およそ40分の1。ここまで蕎麦の生産が落ち込むと需要を賄いきれず、輸入に頼ってしまう、という負のスパイラルに入ってしまっています。中国やアメリカ、カナダなどからの玄蕎麦の輸入は国内で生産される蕎麦のおよそ3倍にものぼる統計がでています。このスパイラルから脱することができる唯一無二の方法は、とにかく蕎麦の消費を増やすこと。せめて今蕎麦専門店が出しているレベルの蕎麦もつゆも満足いくせいろが1枚3,400円のゾーンに入ってくれば一気に蕎麦の消費量は増大するはずです。そば農家が苦しんでいる蕎麦の収益性も改善されるはずです。

茨城県旧水府村出身で現在の慈久庵主人である小川さんは、東京で繁盛している店を閉めて故郷で故郷で生産された蕎麦を打って故郷に恩返しをしたいと考えました。水府村と言えば金砂郷にも近く蕎麦の産地として有名なところです。ところが戻ってみると蕎麦農家が全滅に近いほど蕎麦の生産を止めてしまっていました。採算が合わない、と言うのが理由です。

ここからが小川さんのすごいところで、そば農家を訪ねながら山里の再生運動を始めます。蕎麦と小麦の二毛作を推奨し、小麦の消費にためにうどん屋を始め、うどんの乾麺を作って販売を始める。いまや水府村の蕎麦が全国の有名蕎麦店で手打されるところまで来てます。小川さんの呼びかけに賛同した農家が勝ち組に入ろうという状況まできてます。

この話を聞いて、おそらくそば農家を取り巻く状況は大同小異であることは容易に想像がつきます。作付面積を増やし収益性を確保する、という蕎麦農家の思いと、おいしい蕎麦を今までよりずっと安い値段で食べられるという消費者の思いがなんとかwin-winの方向に進まないのかなあ。蕎麦を食べ歩きながらそんなことを考えていました。

浅川です。お店は丁度交差点の角にあり、まだ暖簾のでていないお店の前に立ってぼんやり車の行き来を眺めていました。さあ、今日は何をいただくか。一人で来ることが分かっていますので、コース料理は予約できません。単品で何が食べられるのか。さ、開店時間ちょうどにお店の方が暖簾を出して中に招じ入れられました。

こうなっていましたか。お店の中はすがすがしく、すっきりとした印象です。ごてごてしたものは一切なく、テーブルや椅子の調度品もあつらえたような同じ白木のセットで行儀よく並べられています。スペースを感じるゆったり感があります。道側はデザインされた障子戸を使い、穏やかに優しく変化された陽光を取り入れてます。正面の一番奥が調理場になっているようです。

その手前左手に打ち場が見えてます。そして打ち場の上下には金砂郷そばの魅力が文章で書かれていますが、これは後で読ませていただきましょう。もちろんお客さんは誰もいない時間帯です。帰るまでには4組のお客さんが入ってきました。4人掛けのテーブル席に座ります。正面に障子が来て、お店全体が見渡せる席です。奥様でしょうか。お茶を運んできてくださいました。さ、品書き。

来る前から、絶対に蕎麦前をいただこうと思っていました。車ですから飲むわけにはいきませんが、今まで見てきたお料理の写真の数々からは強いおいでおいでを感じていました。何がいただけるのか。品書きに“浅川の石臼で味わう蕎麦の定番”というページを発見。ここですね。自分にとっては宝の山です。全部いただきたい。2,3人でくればそれも叶ったでしょうが言ってもはじまりません。お願いしたのは、

赤城鶏の煮こごり(350円)

それと、“素材調理を吟味した肴”から、

赤城鶏のふんわり玉子とじ(良い鶏良い卵の旨みが一緒になりました)(700円)

ここで、店主の金砂郷そばへの思いに目をやります。

“茨城金砂郷産石臼挽そば
金砂郷村は茨城県北部に位置し、在来種から選別固定して新品種「常陸秋そば」を栽培する産地として人気を高めている。そばの実の刈り取り等はすべて手作業にて行う。乾燥は品質を重視して天日干しで調整。「日本一」と評価。その玄蕎麦を磨き、石抜き、粒揃え、脱皮をしとうみにかけ、完全に殻を取り除き石臼で挽き小麦粉一割五分でつないで打った手打のせいろそばです。ぜひご賞味ください。
浅川屋店主“

奥様の手で煮こごりが運ばれてきました。品のいい器に入れられたたっぷりの煮こごり。ゼラチン質でみごとにぷりんぷりんと固まっていますが、このほぐした鶏肉の多さはなんなんでしょう。口に含むとすっとゼラチンが溶けて、旨みがぶああっと襲ってきます。やっぱりすごいなあ。鶏の旨みと出汁が有機的に重なってこんなにうまい煮こごり食べたことないなあ。う~ん、酒!って思わず奥様にお願いしたくなります。アルコール度0.00%の日本酒ってなかったっけ。

続いて配膳されたのが赤城鶏のふんわり玉子とじ。これにはびっくりしました。真っ白のものが入った丼。???です。添えられてきたスプーンで白く泡立ったものを掬って見ると、その下から醤油出汁のつゆが見えました。いやあこうなってましたか。白雪が覆い被さっていたのですね。この白味で作ったメレンゲが結構硬いのです。ふわふわに泡立てた後何かしているのか、泡立てるときにプラスしているのか。不思議な食感にこれは楽しい。下に隠れていた出汁は魚と昆布でしょうか。うまい。これはご飯にぶっかけたいですね。つゆの中からは柔らかな旨みたっぷりの赤城鶏の肉やしいたけなどが入っておりました。量も十分あって早起きした体にずんずん吸い込まれていく感じです。からだも温かくなりました。このあとお蕎麦にするか、もう一品サラダを追加するか。

このようなお店でお料理を残すのは絶対にいやだし、また今度来て今回食べられなかったものをいただこう。そう思って、いよいよ念願だった蕎麦をお願いしました。

金砂郷蕎麦(850円)

石臼挽きの蕎麦です。これに会いたかった。

じっと静かに待っていました。その時が来て、

目に飛び込んできたのは思っていた蕎麦よりもっと荒々しくて蕎麦の持つ穀物の性格が全部出ているような蕎麦でした。ここまでの粗挽きでここまでの変化に富んだ蕎麦だとは。表面には蕎麦の実の砕けた粒子が肉眼で見えるほど大きいままぎっしりと断面を見せてます。よく蕎麦の形にできたなあと思うくらいの粗挽きです。それに、星の色もさまざま混じっていて、それを見ただけでぐっと食欲が前にでてきました。

(もう一皿食べれたなあ)

手繰ってみると、蕎麦特有の穀物の香りが漂ってきました。やっぱりすごいお店だったんだ、と改めてここに来ることができたことに感謝します。食べてみて、ますますその感を強くしました。食べてみると、この外見にふさわしいようなふんわりとしながらもしっかりした食感に幸せな気持ちに包まれました。うまいなあ、蕎麦って。表面の心地よいざらつきを舌が探しています。一口で終わらず、噛み締めながら、二口、三口。いけねえ、つゆがあるでしょ。

つゆの上品な出汁感と濃厚な味わい。1滴1滴に愛情が籠っているような素晴らしいつゆ。これをしてもご主人の蕎麦へのひたむきさを感じてしまいます。金砂郷の蕎麦をちょいとつけて一気にすすりこみ。ああ、蕎麦が残っていてよかった。思わず、つゆを得た時の蕎麦の旨さを思い出しました。ずっと幸せな気持ちを感じていたいから、大盛りにすればよかった?それとも満天せいろを頼む?いえいえ、この幸せなところでとめとくのが一番の幸せでしょう、きっと。

噛み締めながらいただきましたが、ほんの2,3分でのできごとだったのでしょう。楽しかった時間の証拠は、何も乗っていない空のせいろだけ。蕎麦湯をいただき、つゆと蕎麦の高品位を思い浮かべて、フィナーレとなりました。

なりましたが、席を立ちたくありません。われながら未練がましいです。このあと、どうしてもこの場所にいたくて、そば焼き味噌(450円)をいただきました。とってもおいしい味噌でしたが、食べれば食べるほど、ずっとここに居たい思いが強くなるばかりできりがないことに気がつきました。思い切って席を立ち、厨房の前にあるレジで精算いたします。奥様にお礼を申し上げました。厨房からご主人が顔を出され、同じくお礼を告げました。

柏からいらしたんですか?

ちょうど調理場の前が駐車場になっていて、車がいやでも目に入る位置関係になっています。

そうなんです。ずっとお伺いしたくて。やっと今日望みが叶いました。ごちそうさまでした。今日いただけなかったお料理を是非次回お願いしたいと思います。

お二人にいとまを告げてお店を後にしました。

最後ですが、忙しい中、ここに来ることを応援して時間をくれた家族に感謝いたします。

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